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浦和地方裁判所熊谷支部 昭和49年(ワ)149号 判決 1976年5月10日

原告

西沢幸雄

ほか一名

被告

上里産業運輸株式会社

主文

一  被告らは、各自、原告西沢幸雄に対し金四、二〇〇万円およびこれに対する昭和五一年二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、各自、原告西沢照美に対し金一四五万〇、五〇〇円およびこれに対する昭和五一年二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告西沢照美のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

五  この判決は第一項、第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

一  被告らは、各自、原告西沢幸雄(以下、原告幸雄という)に対し金四、二〇〇万円およびこれに対する昭和五一年二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、各自、原告西沢照美(以下、原告照美という)に対し金二五〇万円およびこれに対する昭和五一年二月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  仮執行宣言

第二請求の趣旨に対する答弁

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

第三請求原因

一  身分関係

原告らは夫婦である。

二  事故の発生

原告幸雄(昭和五年一〇月一日生)は、次の交通事故(以下、本件事故という)の当事者となつた。

1  発生日時 昭和四八年一二月二日午後三時三五分ころ

2  発生場所 埼玉県本庄市銀座一丁目四番二号先Y字型交差点附近の路上

3  加害車 普通乗用車(埼五六す一三六三号)

右運転者 被告小林新一(以下、被告小林という)

4  被害車 原動機付自転車(本庄市六―九九六号)

右運転者 原告幸雄

5  態様 幅約三・二〇メートルの狭い道路上での対向車どうしの正面衝突

6  結果 原告幸雄は、右下腿轢創複雑骨折、顔面挫創、腰部左肩打撲症等の傷害を受けた。

三  責任原因

(一)  被告上里産業運輸株式会社(以下、被告会社という)は、本件事故発生当時加害車を所有してこれを自己のため運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法三条により損害賠償の義務を負う。

(二)  被告小林は、自己の過失(幅員が約三・二〇メートルと狭く見通しの悪い道路に進入する際には徐行して安全を確認しつつ進行しなければならないのに、そうしないで時速約五五キロメートルの速度で進行した、との過失)により本件事故を発生させたから民法七〇九条により損害賠償の義務を負う。

四  治療休養の経過と現状

(一)  原告は、本件事故により受けた前記傷害およびその後本件事故と右傷害の治療等の負担を原因として生じた脳血栓症のため次のような治療を余儀なくされた。

1 西外科医院

昭和四八年一二月二日から昭和四九年二月二三日まで八四日間の入院

2 塩原医院

昭和四九年二月二四日から同年三月四日まで九日間(実日数八日)の往診

3 松沢内科放射線科医院

昭和四九年二月二五日から昭和四九年三月三日まで七日間(実日数7日)の往診

4 美原記念病院

昭和四九年三月四日から同年九月二八日まで二〇九日間の入院

5 鹿教湯病院

昭和五〇年七月一日から同年九月三〇日まで九二日間の入院

6 忰田マツサージ師

昭和五〇年一月七日から同年六月三〇日まで約六か月間(実日数一一八日)の通院

(二)  右のような治療にもかかわらず原告の身体は原状に復さず、現に右下腿欠損および半身不随の後遺症が存在する。

(三)  原告は、前記各傷害および後遺症のため、昭和四八年一二月二日から昭和五〇年一二月末日まで二年以上にわたつて完全に休業せざるをえなかつた。

五  損害

(一)  原告幸雄

1 入院治療費 金一一一万九、一二五円

<1> 西外科医院 金四九万〇、八九〇円

<2> 塩原医院 金一万三、〇五六円

<3> 松沢内科放射線科医院 金二、八〇八円

<4> 美原記念病院 金三六万円

<5> 鹿教湯病院 金一五万七、九七一円

<6> 忰田マツサージ師 金九万四、四〇〇円

2 入院雑費 金一九万二、五〇〇円

入院日数 三八五日

一日当り費用 金五〇〇円

算式 385×500=192,500

3 休業補償費 金五八一万七、八〇〇円

休業期間 昭和四八年一二月二日から昭和五〇年一二月末日までの二年以上

職業 写真業

年収 金二九〇万八、九〇〇円(昭和四九年度賃金センサス第一巻第一表男子高専短大卒四〇才~四四才の項による。なお、原告幸雄は昭和五年一〇月一日生で東京写真大学卒業)

算式 2,908,900×2=5,817,800

4 逸失利益 金四三七一万四、三二三円

年令 昭和五一年一月一日現在四五才

職業 写真業

年収 金三六九万円

労働能力喪失率 九〇パーセント

原告幸雄には前記のとおり右下腿欠損、半身不随の後遺症があり、同原告はこれにより控え目に見ても九〇パーセントの労働能力を喪失した。

就労可能年数 二二年(ライプニツツ係数一三・一六三)

算式 3,690,000×90/100×13.163=43,714,323

5 義足代金 金五一万八、〇〇〇円

6 風呂改造費 金一〇〇万円

原告幸雄は、右下腿欠損の後遺症のため従前の風呂には入ることができなくなり、やむなく金一四五万二、〇〇〇円をかけてこれを改造した。このうち金一〇〇万円を本件の損害として請求する。

7 附添費 金三一万九、九二〇円

8 慰藉料 金一、四〇〇万円

9 以上合計 金六、六六八万一、六六八円

10 損害顛補 金八六四万円

11 9-10 金五、八〇四万一、六六八円

12 弁護士費用 金三〇〇万円

13 11+12 金六、一〇四万一、六六八円

(二)  原告照美

1 休業補償費 金六五万円

原告照美は、夫である原告幸雄の写真屋営業を補助し、月額金六万五、〇〇〇円の収入を得ていたが、原告幸雄の前記傷害のため、昭和四八年一二月二日から昭和四九年九月二八日ころまでの約一〇か月間附添せざるを得なかつた。(なお、原告幸雄の附添は昼夜共に必要であつたので、原告照美以外にも附添人を要した。この費用が原告幸雄の損害7に記載したものである。)

2 通院費 金一五万〇、五〇〇円

原告照美は1記載の附添のため原告幸雄入院中は通院せざるを得ず、美原記念病院と鹿教湯病院への入院期間(三〇一日)中一日平均金五〇〇円の通院費を支出した(西外科医院へは自転車で通院した)。

500×301=150,500

3 慰藉料 金二〇〇万円

4 弁護士費用 金二〇万円

5 以上合計 金三〇〇万〇、五〇〇円

六  結論

以上により原告幸雄は金六、一〇四万一、六六八円、原告照美は金三〇〇万〇、五〇〇円をそれぞれ被告ら各自に対して請求しうるのであるが、原告らは、本訴においては右各金員のうちのそれぞれ金四、二〇〇万円、金二五〇万円およびこれらに対する本件事故発生の日以後であり損害額算定の基準日以後でもある昭和五一年二月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第四請求原因に対する答弁

一  第一項は認める。

二  第二項も認める。

三(一)  第三項(一)も認める(但し、責任の存在は争う)。

(二)  同項(二)は否認する。

四(一)  第四項(一)については、脳血栓症と本件事故との因果関係の点を除き、認める。脳血栓症は本件事故のみによつて生じたものではなく、原告幸雄がそれを生じさせやすい体質であつたこともこれに大いに関与している。

(二)  同項(二)は認める。但し、半身不随の後遺症は前記脳血栓症から生じたものであり、前述のとおり右脳血栓症は本件事故のみによつて生じたものではない。

(三)  同項(三)は争う。原告幸雄の休業期間は同人の症状が固定した昭和五〇年二月末日までである。

五(一)1 第五項(一)は認める。

2 同項(一)2のうち入院日数については認める。その余は知らない。

3 同項(一)3につき、原告幸雄が写真業を営んでおり、昭和五年一〇月一日生で東京写真大学卒業であることは認めるがその余は否認する。休業期間は昭和四八年一二月二日から昭和五〇年二月末日までの一五か月間であり、収入は月金一五万七、四〇〇円(昭和四七年賃金センサス第一巻第二表の産業計、企業規模計、学歴計の年令別平均給与額を一・一倍して作成した年令的平均給与額)、年一八八万八、八〇〇円である。

4 同項(一)4のうち年令、職業、就労可能年数は認める。年収と労働能力喪失率は否認する。年収は一八八万八、八〇〇(一五万七、四〇〇×一二)円であり、労働能力喪失率は七九パーセントである。

5 同項(一)5は認める。

6 同項(一)6は知らない。

7 同項(一)7も知らない。

8 同項(一)8は争う。

9 同項(一)10は認める。

10 同項(一)12は知らない。

(二)1  第五項(二)1は知らない。

2  同項(二)2も知らない。

3  同項(二)3は争う。

4  同項(二)4は知らない。

第五抗弁

一  免責の主張

(一)  本件事故は原告幸雄の過失によつて発生したものであり、被告には過失は存しない。すなわち、本件事故発生の状況は以下のとおりであつたのである。

被告小林は、加害車を運転し本庄市役所方面から本庄市前原方面に向い進行してきて本件事故現場附近に差しかかつた際、前方約二〇メートルの地点に被害車が時速三〇キロメートルで道路中央を越えて対向して来るのを認め、直ちに急停止の措置を講ずると共に左方に避難したが、間に合わず衝突してしまつた。

一方、原告幸雄は、進路前方約二八メートルの地点に加害車の進行して来るのを認めたにもかかわらず、道路幅が狭い(約三・二〇メートル)のであるから衝突を避けるために減速して徐行するはもちろんできるだけ道路左側に寄つて進行すべきであつたのに、漫然時速約三〇キロメートルで道路中央附近を進行し続けた。

右のとおり、被告小林は自動車運転者としてなすべきことは全てなしているのに対し、原告幸雄は自動車運転者としての義務に反する行動をとつており、これこそが本件事故発生の原因となつたのである。

(二)  本件事故発生当時加害車には構造上の欠陥も機能上の障害もなかつた。

二  過失相殺の主張

仮に免責の主張が認められないとしても、本件事故の発生には第一項にのべた原告幸雄の落度が大きく関与しているから、損害賠償額の算定に当つては、右の落度を正当に考慮に入れるべきである。

第六抗弁に対する答弁

一  第一項は否認する。

二  第二項は争う。

第七証拠関係〔略〕

理由

第一身分関係

請求原因第一項(原告らが夫婦であること)については当事者間に争いがない。

第二事故発生

請求原因第二項(事故の発生)についても当事者間に争いがない。

第三責任原因

一  被告会社

請求原因第三項(一)(本件事故発生当時被告会社が加害車の運行供用者であつたこと)についても当事者間に争いがない。

二  被告小林

被告小林の過失の有無に関し、関係各証拠によれば次の各事実が認められ、これらの認定を妨げるだけの証拠はない。

イ  本件事故発生当時の本件事故発生場所附近の状況はほぼ別紙現場見取図記載のとおりであつた。

右事実は成立に争いのない乙第一号証により認められる。

ロ  衝突地点は前記図面上×と記載されている場所である。

右事実は前記乙第一号証と被告本人小林新一の供述とにより認められる。

ハ  本件事故発生場所附近は、どちら側から見ても見通しのよくない所で、衝突地点から本庄市役所方面に向い約二一・六メートルの地点からの本庄市前原方面への見通しは約二八メートル程度である。

右事実は前記乙第一号証と証人小野賢一、被告本人小林新一の各供述とにより認められる。

ニ  被告小林は時速四〇キロメートル前後以上の速さで衝突地点より本庄市役所方面へ約二一・六〇メートルの地点に差しかかつた時前方約二八メートル(衝突地点から本庄市前原方面に向い約八・六メートル)の地点に道路中央附近を対向してくる被害車を発見して急制動の措置をとると同時に左にハンドルを切つたが間に合わず、前記衝突地点で加害車右前部と被害車が衝突し、被害車は右衝突地点から約一四・八〇メートル押し戻されて倒れた。

右事実は前記乙第一号証と証人小野賢一、被告本人小林新一の各供述とによつて認められる。

以上認定の各事実によれば、被告小林には、見通しが悪くしかも幅の狭い(約三・二〇メートル)道路に進入しようとする際には速さを充分に落して徐行ないしそれに近い状態で進行すべきであつたのに、そうしないでかなりな高速(本人は時速四〇キロメートル前後から四五キロメートル程度であつたと供述しているが、残されたスリツプ痕((一八・六〇メートルと一四・〇〇メートル))、被告小林が被害車を発見してから衝突するまでの同一時間内に加害車は被害車の約二・五倍の距離を進んでいることなどから見て右以上であつた可能性が大きい。)で走行したという過失があり、被告小林はこの過失のため本件事故を生じさせたということができる。

第四治療休業の経過と現状

一  請求原因第四項(一)(治療の経過)については、本件事故と脳血栓症との因果関係の点を除き当事者間に争いがない。

本件事故と脳血栓症との因果関係について見ると、いずれも成立に争いのない甲第三ないし第五号証、第四五号証によれば、原告幸雄の脳血栓症は本件事故および本件事故により余儀なくされた右下肢切断手術などの心身に与える負担を原因として発病したものと認めることができ、この認定を妨げるだけの証拠はない。

二  請求原因第四項(二)(原告に前記各傷害と前記脳血栓症から生じたものとして右下腿欠損および半身不随の後遺症が存すること)については当事者間に争いがない。

三  いずれも成立に争いのない甲第三七号証、第四六号証、原告本人西沢幸雄、同西沢照美の各供述と治療の経過、後遺症についてすでに認定したところを総合すると、請求原因第四項(三)(原告幸雄が前記各傷害および後遺症のため昭和四八年一二月二日から昭和五〇年一二月末日まで二年以上にわたつて完全に休業せざるをえなかつたこと)が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

第五損害

一  原告幸雄

(一)  入院治療費 金一一一万九、一二五円

1 西外科医院 金四九万〇、八九〇円

・ 当事者間に争いがない。

2 塩原医院 金一万三、〇五六円

・ 当事者間に争いがない。

3 松沢内科放射線科医院 金二、八〇八円

・ 当事者間に争いがない。

4 美原記念病院 金三六万円

・ 当事者間に争いがない。

5 鹿教湯病院 金一五万七、九七一円

・ 当事者間に争いがない。

6 忰田マツサージ師 金九万四、四〇〇円

・ 当事者間に争いがない。

(二)  入院雑費 金一九万二、五〇〇円

入院日数 三八五日

・ 当事者間に争いがない。

一日当り費用 金五〇〇円

・ 顕著な事実

算式 385×500=192,500

(三)  休業補償費 金五八一万七、八〇〇円

休業期間 昭和四八年一二月二日から昭和五〇年一二月末日までの二年以上

・ 前認定のとおり

職業 写真業

・ 当事者間に争いがない。

年収 金二九〇万八、九〇〇円

・ 昭和四九年度賃金センサス第一巻第一表(年齢階級別きまつて支給する現金給与額、所定給与額及び年間賞与その他特別給与額)男子高専・短大卒四〇歳~四四歳の項による。なお、原告幸雄が昭和五年一〇月一日生であること、同原告が東京写真大学卒業であることは当事者間に争いがない。

算式 2,908,900×2=5,817,800

(四)  逸失利益 金四、三七一万四、三二三円

年齢 昭和五一年一月一日現在四五歳

・ 当事者間に争いがない。

職業 写真業

・ 当事者間に争いがない。

年収 金二九〇万八、九〇〇円

・ 前認定のとおり。なお、成立に争いのない甲第三四号証、原告本人西沢幸雄の供述中収入が右以上であつたとの部分はいずれも採用しない。その他年収が右認定額を越えることを認めさせるだけの証拠はない。

労働能力喪失率 九〇パーセント

・ 成立に争いのない甲第三七号証と原告本人西沢幸雄、同西沢照美の各供述とにより、原告幸雄は前記後遺症のため従来有していた労働能力の少くとも九〇パーセントを失つたものと認めることができる。

就労可能年数 二二年(ライプニツツ係数一三・一六三)

・ 当事者間に争いがない。

算式 2,908,900×0.9×13.163=34,460,865

(五)  義足代金 金五一万八、〇〇〇円

・ 当事者間に争いがない。

(六)  風呂改造費 金一〇〇万円

・ 原告本人西沢照美の供述と同供述により成立の認められる甲第二三、第三八各号証によれば、原告幸雄は前記右下腿欠損の後遺症のため従前の風呂に入ることができなくなりやむをえずこれを改造したこと、その費用が金一四五万二、〇〇〇円であつたこと、右工事中原告幸雄の右後遺症により必要とされたもの以外のものの費用は金四五万二、〇〇〇円を越えないことが認められる。

(七)  附添費 金三一万九、九二〇円

・ 原告本人西沢照美の供述により成立の認められる甲第二四ないし第三一号証

(八)  慰藉料 金八〇〇万円

(九)  以上合計 金五、一四二万二、八二一円

(一〇)  過失相殺 なし

前記乙第一号証と被告本人小林新一の供述とを総合すると、原告幸雄は本件事故発生直前徐行ないしそれに近い状態で進行してはいなかつたものと認められ、前認定の本件事故発生場所附近の状況から見て、これは同原告の落度でありこの落度も本件事故発生の一つの原因となつているということができる。しかし、前認定のとおりの被告小林新一の過失の大きさ(普通乗用車を運転して見通しのよくない幅約三・二〇メートルの狭い道路に高速で進入するというのは、無謀といわれても仕方のない行動である。)、加害車が普通乗用車であるのに対し被害車が原動機付自転車であること、被害の内容、程度等に照して、本件にあつては原告幸雄の前記落度を理由に過失相殺する必要はないものと考える。その他にも過失相殺を必要とさせるだけの資料はない(なお、原告幸雄が道路中央附近を進行していたことは必ずしも非難に値しない。前認定のような両側に人家のある狭い道路を進行する際には、飛び出しなどに対処するため中央附近を進行することもやむをえないであろう。)。過失相殺はしないことにする。

(一一)  損害顛補金八六四万円

・ 当事者間に争いがない。

(一二)  (九)-(一一) 金四、二七八万八、二一〇円

(一三)  弁護士費用 金三〇〇万円

(一四)  (一二)+(一三) 金四、五七八万八、二一〇円

二  原告照美

(一)  休業補償費 金六五万円

・ 原告本人西沢照美の供述、同供述により成立の認められる甲第三一号証、いずれも成立に争いのない甲第一ないし第三号証と前記治療休業の経過に関する当事者間に争いのない事実とを総合すると、原告照美は、夫である原告幸雄の写真屋営業を補助し月額金六万五、〇〇〇円の収入を得ていたが、原告幸雄の前記傷害のため昭和四八年一二月二日から昭和四九年九月二八日ころまでの約一〇か月間同原告に附添をしたこと、原告幸雄の附添は昼夜共に必要であつたため原告幸雄の依頼した附添人以外に原告照美も附添をする必要があつたことが認められる。

なお、右のような場合に原告照美の一〇か月分の収入を同人の損害として請求できるかどうかについては疑問がないわけではない。すなわち、この問題は直接の被害者である原告幸雄の負担する附添費用の問題として解決すべきではないか、との疑問である。しかし妻の収入がある程度以上に高額であつて仕事を休んで夫の附添をすることが不相当な方法であると認められる場合でない限り、事故によつて重傷を負つた夫のために附添をしそのためその間の収入を失つた妻は、失つた収入を事故によつて生じた自分自身の損害として主張できるものと考えるべきである。本件にあつては、原告照美の前記収入は附添をする妻として不相当に高額なものとは認められないから、これを同原告自身の損害として認めるべきである。

(二)  通院費 金一五万〇、五〇〇円

・ 原告本人西沢照美の供述と前記治療経過に関する当事者間に争いのない事実とによると、原告照美は前記附添のため原告幸雄の美原記念病院、鹿教湯病院入院中はバス、タクシー等を利用して通院せざるを得なかつたこと、その通院費は右両病院への全入院期間(三〇一日)の一日平均にして金五〇〇円程度であつたことが認められる。

500×301=150,500

(三)  慰藉料 金五〇万円

・ 本件事故の直接の被害者でない原告照美に慰藉料請求を認めるべきかどうかについては、民法七一一条の法意との関連でかなり疑問がある。しかし、前認定のとおりの被害の大きさなどに照してこれを認めることにする。

(四)  以上合計 金一三〇万〇、五〇〇円

(五)  過失相殺 なし

(六)  弁護士費用 金一五万円

(七)  (四)+(六) 金一四五万〇、五〇〇円

第六結論

以上によれば、原告らは、被告ら各自に対し、本件事故による損害の賠償として、原告幸雄分として金四、五七八万八、二一〇円、原告照美分として金一四五万〇、五〇〇円およびこれらに対する本件事故発生の日以後であり損害額算定の基準日以後でもある昭和五一年二月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。原告幸雄の本訴請求は全て右限度内にあるのでこれを認容し、原告照美の本訴請求中右の限度内にあるものは理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山下和明)

現場見取図

<省略>

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